新橋駅から徒歩10分ほど。「お父さんの街」の裏側には色合い豊かでフォトジェニックな風景が広がります。広場の舗装は機関車の転車台のデザインです。
新しい環境下で何かと不安を抱えなければならないのが4月の宿命です。
はやる気持ちで仕事をしても能率は上がりません。そんな時こそお散歩してリフレッシュしましょう。
今回は多くの企業が集まる都心のど真ん中、汐留です。
昔はほこりまみれだった？
大学1年生の頃、ドラマやCMのエキストラのアルバイトをしていました。
拘束時間によりますが日給だいたい7千円。交通費も出ないし今思うと有名人に会えるという特典以外は割に合わない仕事だったと記憶しています。
そして、ここ汐留もそんな仕事の一環で赴いた場所のひとつでした。
ウインズ汐留でモニターを観ながら賭け馬を応援する観客の役です。前線のエキストラが汗を表現するために、真冬のなか顔面や頭に霧吹きを吹きかけたり目薬をさして涙したり… そんな彼らを見て「これがプロか」と、呆れと感動が混ざりあった不思議な感覚を抱いたのを覚えています。
そんな彼らの取り巻きのような人たちに、食事に誘われたのが建物を出て目の前にある「イタリア街」でした。
誘いを断れない僕が彼らと一緒に行ったお店は無くなっていましたが、当時のハイカラな街の雰囲気はそのまま。
相変わらずイタリアン情緒あふれるストリート街です。
石畳の道と異国情緒を活かして車のCM撮影が行われることも。
その道を通る車は、馬券を握りしめた客を乗せたタクシーでさえ3割増しにかっこよく見えます。
この通りに面した喫茶店のテラスでカルボナーラをフォークでくるくる回すだけで素敵なランチタイムを送れることでしょう。
しかし、歴史を遡ると意外な事実も見えてきます。
汐留は、約150年前、日本初の鉄道が新橋から横浜を結んだときの新橋停車場（新橋駅）があった「鉄道発祥の地」です。
やがて東京駅が開業すると旅客営業の機能を東京駅に譲り、新橋停車場は貨物専用駅になります。汐留は貨物ターミナルの街になったんですね。
今ではおしゃれなイタリア街も昔はコンテナと運送会社のトラックが行き交う、とてもほこりっぽい街だったそうです。
当時の写真を見てみると、貸車も寝静まった夜に引き込み線にたたずめば米ドラマ「逃亡者」の主人公にでもなれるかのようなムードがあります。
イタリアンな現在とは違った魅力があったんですね。
それから、昭和の終わりに国鉄が民営化されると、汐留貨物駅もその役目を終え、汐留一帯は広大な空き地の「過疎の街」となり、10数年の時を経て「汐留シオサイト」として再開発されました。
現在では大手広告会社本社ビルやテレビ局、ホテル、高層マンションが林立する街へと変貌しています。
ちなみに、旧新橋停車場は、今は超高層ビルに囲まれレストランが併設された鉄道歴史展示室としてオフィス街の憩いの場となっています。
そして今回はもうひとつ。
営業マン時代、モノレールから眺めた不思議な庭園を思い出したので行ってみました。
東西には首都高速環状線とモノレールが、南北は高層ビルに囲まれた庭園。敷地の中に軸線を通し左右対称に構成するのがイタリア庭園の特徴です。
それがイタリア紹介事業で寄贈された「イタリア公園」。
先ほどのイタリア街の隣に位置します。
12体のイタリア彫刻が鎮座するその公園は、近くのマンション住民だけでなくランチにお弁当を広げる勤め人たちの英気を養うポイントになっています。
周囲を無機質なビル群や列車に囲まれた庭園は文字通り、潤いを持った都会のオアシス。
軸線の中心にある噴水。ピエトロサンタ市で製作された本場イタリア彫刻です。園内には他に11体の彫刻があるので、それぞれの表情や仕草を見て回るのも一興ですよ！
都会の喧騒はときに不安をあおりますが、少し足を伸ばせば逆に癒やしのスポットも存在するもの。
会社の空気とは一線を画した異国風な街並みでひと呼吸してみませんか。
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脚本家 新井啓明
日本大学卒業後、広告営業、ネット記事編集に従事。現在は、ゲームのシナリオ 執筆から、舞台コンペのための脚本も手がけている、今でも心は小学生の会社員。
【ブログ】
https://note.mu/kikitojiji190814
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