会社の新年ムードも初日で終わり、日常のペースを取り戻したところで、仲間内から新年会の幹事を任されたのがちょうど1年前。
喧騒しかない新宿を避けつつもそれなりのアーバンな酒宴を求めてたどり着いたのがここ中野でした。
中野に初めて来たのは大学生の頃。
学校がある江古田からバスで20分ほど、このサブカル街はまさに僕にとって聖地でした。
アニメやアイドルグッズがそろう商業施設「中野ブロードウェイ」はまさに癒しの場所。
したがってオタク文化以外で中野の魅力に触れられたのが、僕にとっては1年前なのです。
今回あらためて中野駅に降り立つと、真っ先に目に入るのが駅北口にある斜面屋根が特徴の複合施設「中野サンプラザ」。
隣接する中野区役所とともにランドマークとして街を見守っていましたが、老朽化のため建て替えが決まり新施設は28年に完成する予定とのこと。
そこから区役所を抜けると「中野セントラルパーク」という開けた公園がありますが、ここが何ともおしゃれ。
冬の芝生が眼前に広がり幼児と親のじゃれ合ってる姿は大手企業のCMに出てくるワンシーンのようではありませんか。
夏になるとビアガーデンが行われ、大学や有名企業本社もあってか毎日がお祭り騒ぎなんです。
そんな賑やかな場所ですが歴史を 紐解くと意外な事実もあります。もともとは警察大学校の跡地を開発したのですが、戦前は旧日本軍の陸軍中野学校がありました。
さらにさかのぼれば、江戸時代8代将軍の徳川綱吉が造らせたという広大な犬屋敷があったそうです。
今でも区役所の前には複数の犬の銅像があります。
のどかな風景からは想像がつきませんが、そんな豆知識を頭の片隅に置いておけば、また違った風景を見られるかもしれませんね。
さて、そんな北口の反対側である南口を出ると百貨店のマルイがある商店街通りがあります。
そのマルイの裏側に広がっている飲み屋街が「中野レンガ坂」です。レンガ坂はその名のとおり、レンガが地面に敷き詰められた通りです。
西洋風のベンチが置かれた洋食店に老舗を思わせる居酒屋、趣向をこらした店看板など和と洋が混合したグローバルな空間が広がっています。
昼の時間帯は、人はまばらでひっそりと息を潜めていますが、夜になると打って変わって電飾がきらめき、陽気な洋楽と香ばしい肴の匂いが来る者の食欲を刺激してくれます。
カップルや仕事帰りのサラリーマン、流浪の旅人のような風貌の人がいるのはこの土地の空気が彼らを呼び込んでいるのかも。
調べてみると、やはりこの辺り一帯も昔は犬屋敷跡でした。
それから8代将軍吉宗の時代になると桃の木が植えられ花見客で賑わったといいます。
坂を登った先にある通りは「桃園通り」と言われ、もしかしたらその名残なのかもしれません。
江戸に昭和に平成、そして令和といった時代が入り交じり、学生にサラリーマン、オタクに最近では外国人観光客まで。
色んな要素が混ざり合い化学反応を起こし続けてきたカオスな街・中野。勇気を出して、もう一歩だけその先に足を伸ばしてみると、 街の魅力を再発見できそうですね。
[box class=”box1″]
脚本家 新井啓明
日本大学卒業後、広告営業、ネット記事編集に従事。現在は、ゲームのシナリオ 執筆から、舞台コンペのための脚本も手がけている、今でも心は小学生の会社員。
【ブログ】
https://note.mu/kikitojiji190814
[/box]