本作でサルバドールの幼少期の母親ハシンタを演じた、スペイン生まれの女優ペネロペ・クルス。落ち込んでもへこたれずに、渡米して成功を収めた彼女の積極的な生き方に学びたい。
思い出を糧に生き抜く『ペイン・アンド・グローリー』
スペイン出身の有名映画監督で脚本家のサルバドール(アントニオ・バンデラス)は、長年に渡り映画制作の現場から離れ、隠居同然の生活を送っていました。
彼は母親を亡くした悲しみから立ち直れず、体調面でも耳鳴りや頭痛や関節の炎症などに悩まされ、生きていく気力を失いかけていたのです。
そんなサルバドールの元に、32年前に自身が撮影した映画「風味」のリバイバル上映の知らせが届きます。
ゲストで招かれた彼は了承しますが、共にゲストとして呼ばれている主演のアルベルト(アシエル・エチュアンディア)とは仲違いして音信不通でした。
サルバドールはアルベルトと再会して謝罪し、二人の関係は一旦修復します。そして2人で時を共有しながら、サルバドールはアルベルトが所持していたヘロインを試し、母親のハシンタ(ペネロペ・クルス)との生活を思い出し浸るのです。
その後ドラッグ依存や体調不良で、このままでは破滅すると悟ったサルバドールは、医者のアドバイスを受けながら監督としての再起を誓うのですが…。
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の自伝的物語を映画化した本作は、ままならない人生を送っていたとしても、思い出を糧に最後まで幸福を諦めるべきではないという人生賛歌の物語です。
劇中、サルバドールは観客から投げかけられた質問を遮り「そんなことより、作品が歳月を生き抜いたか知りたい」と問いかけます。
この台詞にアルモドバルの映画監督としての強い矜恃が込められていると感じました。
カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞し、アカデミー賞でもノミネートされたアントニオ・バンデラスの誇りと弱さを内包した演技は繊細で、彼の存在が演者としてこれ程までに可愛らしくて愛おしく思えたのは初めてかもしれません。
人が過去を振り返れば、永遠に忘れることができない大切で甘美な思い出もあれば、他人を傷つけ後悔していることもあるはず。
思い出に身体を預けながらも前を向いて生きていかなければいけないと背中を押してくれる「ペイン・アンド・グローリー」を是非体験してみてください。
ペネロペから学ぶ チャンスをつかむ積極的な生き方
本作でサルバドールの幼少期の母親ハシンタを演じたペネロペ・クルスは、スペインで生まれ育ちました。
幼い頃からエンターテイメントの世界で活躍することを夢見ていた彼女は、芸能事務所のオーディションに合格して女優業を始め、ドラマ出演などを経てラブコメディ「ハモンハモン」で映画デビューを果たします。
しかし完成作品を観たら自分の裸のシーンがあまりにも多かったので落ち込んだそうです。
しかし彼女はへこたれず、英語とバレエを学ぶためにニューヨークへ渡米。
そして数本の映画に出演したのちにペドロ・アルモドバル監督作「オール・アバウト・マイ・マザー」への出演で話題となり、アメリカでの女優業を本格的に始めるのです。
ペネロペはこれまで数多くの共演者と恋に落ちてきました。
例えば「すべての美しい馬」で共演したマット・デイモン、「バニラ・スカイ」ではトム・クルーズ、「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」ではマシュー・マコノヒー、そしてオーランド・ブルームやジョシュ・ハートネットなどとの交際を経て、何度か映画共演したハビエル・バルデムと結婚したのです。
ペネロペは仕事でも恋愛でも自分の欲望を隠しません。インタビューでは共演したい俳優や仕事をしたい監督などをアナウンスします。
私生活や仕事において、消極的な行動や思考に陥る方は多いと思いますが、ペネロペの積極的な生き方には学ぶべき部分もあるかもしれません。
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「ペイン・アンド・グローリー」
監督・脚本 ペドロ・アルモドバル
出演 アントニオ・バンデラス、アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラリャ、ノラ・ナバス/ペネロペ・クルス他
TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ他にて公開中。
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