今の私をすべて出せる役に出会えた 夏帆『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム 「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」で審査員特別賞を受賞した 箱田優子氏の「ブルーアワー」を、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』というタイトルで映画化。

30歳になっても何者にもなれない自分や大嫌いな田舎にコンプレックスを抱きながらも 奮闘する主人公の砂田を演じるのは、自身も30歳を目前にした夏帆さん。

「今一番やりたい役に出会えた」という彼女に、今の心境や作品に込めた想いを伺った。

20代後半の焦りや葛藤 共感できるポイントが次々

10月11日よりテアトル新宿、ユーロスペースほかで公開される『ブルーアワーにぶっ飛ばす』。

夏帆さんが演じるのは30歳の自称売れっ子CMディレクター・砂田。

東京で日々仕事に明け暮れながらも満ち足りた毎日を送っているように見えるが、口をひらけば悪態をつき心は荒みきっていた。ある日、病気の祖母を見舞うため、砂田の嫌いな故郷・茨城に帰ることに。
ついて来たのは、砂田が困った時には必ず現れる、自由で天真爛漫な秘密の友だち・清浦(シム・ウンギョン)。

しかし、再会した家族の前では、都内で身に着けた砂田の理論武装は通用せず、やがて全てを剥がされた時、目を背けて来た本当の自分の顔が見えて来て… というストーリー。

「脚本を読んだ時、率直にすごく面白いと思いました。
これまで読んだことのない本でしたし、言葉選びのセンスや重さ・軽さのバランスも絶妙で。何より読み進めながら“あぁ、こういう感情知ってる” “言葉で言い表せないけど、この感覚あるよね”って、共感できるポイントが次々に出てきて、この役をやりたいと。
今の私が私として今持っているものをすべて出せる、向き合える役にやっと出会えたと感じました」砂田とご自身との共通点を聞くと『ものすごく不器用なところ!』と即答が。「素直になれないところとか、すごくひねくれ者なところが似ていますね。
酔っぱらってカラオケで騒いで、気づいたら家の前で寝てた… なんて、砂田みたいな実体験はないですけど、自分のやりどころのない気持ちを何かに当たり散らしたくなることは私にもあります。

それに砂田の感じる焦りや葛藤、時間が過ぎてしまう喪失感は20代後半で徐々に実感として考え出すんじゃないでしょうか。
おばあちゃんは病気で入院し、久しぶりに会った母親は年老いていて。それを目の当たりにした砂田の気持ちとか、私もですが多くの人が共感できると思います。だから砂田は決して遠いところにいる役ではなくて、逆にものすごく身近にいる役だと思えました」

相手役の清浦を演じるシム・ウンギョンさんについて伺うと。
「撮影は彼女が日本に来てまだ間もない頃で、セリフは全部日本語。きっと本人は不安だったはずなのに、現場ではそれを一切感じさせないんです。ウンギョンちゃんはすごくユーモアがあって明るくて、一緒にいるだけで楽しくなる人。その感じが清浦とかぶりますね。彼女だからこそ清浦がここまで魅力的になったのだと思いますし、私も相棒として清浦が側に居てくれたらいいのにって思います」

英語や表現者の追求に「年齢は関係なくなった」

実年齢も30歳を目前に控えた夏帆さん。

子供の頃描いていた自分と今の自分についてを伺うと『子供の頃の方が大人だったかも』と笑う。

「30歳って、もっと地に足がついていると思ったんですけどね。実際は、ふわふわしててグラグラしてて、それこそ砂田みたいです。歳を重ねるにつれて経験値も増えて、自分のダメなところがどんどん見えて来て、10代の方がしっかりしていたんじゃないかって思うほど(笑)。

私ってこんなにダメだったっけ? こんなに不安定でモロかったっけ? とジワジワ感じています」

30歳までにやりたいことを教えてもらうと。

「25歳くらいまでは30歳までにこうなるっていう理想があって、それに向かって仕事を頑張らなきゃと思っていたんですけど、いざ30歳を目の前にすると、なくなりましたね。あまり年齢は関係ないかな、というより30歳までじゃなくて、今しなきゃと(笑)。

プライベートでは英語を勉強したいです。英語が話せれば世界の大半の人とコミュニケーションが取れるじゃないですか。新しい人たちと知り合う機会があるにも関わらず、英語が話せないばかりに新しい世界へ踏み込めないのが惨めと言うか悔しいなと。

それこそこの作品がNYで上映されたときに舞台挨拶に行かせて頂いたんですけど、それを痛感して。

でも帰国すると忙しいとか何かの理由を付けて腰が重くなってしまって…。でも今年こそ(笑)」

仕事、結婚、出産など、多くのターニングポイントを迎える人が多い30代。

最後に夏帆さんに自分の30代を想像してもらうと。

「結婚かぁ…。周りに既婚者が増えて、すごく身近なことになったという実感はありますが、まだ自分には遠いという感じです。

将来を考えたとき、まだ仕事のことを考える時間の方が多いです。今もこれからどんな役をやりたいのか、表現者としてどうありたいのかを自問自答しています。

役も出会いなので、いい役と出会うためにも目の前にある与えられた仕事をコツコツと積み重ねて行きたいと思います」

PHOTO / Hirohiko Eguchi (LinX)
STYLING / Naomi Shimizu
HAIR & MAKE / Naoki Ishikawa
TEXT / Satoko Nemoto


1991年生まれ。2004年に女優デビュー。2007年公開、初主演映画『天然コケッコー』で数々の新人賞を受賞後、『うた魂』『砂時計』など数多くの作品で主演を務める。現在放送中のNHK 大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺~」に出演。テレビ東京10月期ドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」ではダブル主演を務める。2020年には、映画「Red」、「架空OL日記」が公開予定。

(C)2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

「ブルーアワーにぶっ飛ばす」
監督・脚本/箱田優子
出演/夏帆、シム・ウンギョン、渡辺大知、 黒田大輔、嶋田久作、ユースケ・サンタマリア、 でんでん、南果歩 他
公開/10月11日(金)テアトル新宿、ユーロスペース 他

この記事を書いたのは
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