蓋を開けてみたら、全然違う話になっていることも。どうなるか、全然わからない…。
1月末のとある晴れた日。テラスで撮影を終えた荒川さんが「まだ、本が1ページも上がってないんですよね」と苦笑いしながら話し始めてくれた。
荒川さんはじめ、三宅弘城さん、吉岡里帆さん、風間杜夫さん。そして作家であり演出家である赤堀雅秋さんの5人の舞台『白昼夢』の話だ。
手元には“現代社会に取り残された人々のもがきと再生の話”と書かれたプロットがあるのだが「どうなるか、全然わからない」と荒川さんは笑う。
荒川さんが演じるのは、風間さん演じる高橋家の家主・清の次男で家庭内暴力を振るう引きこもり。
見かねた三宅さん演じる長男がNPO法人に相談、そこから訪ねて来るのが、吉岡さんと赤堀さんというあらすじだと伺っているのだが…。
「あらすじ通りになるかどうかもわからないと言っていましたよ。でも前回、赤堀さんの作品『鳥の名前』に出演した時もそうだったんですよね。プロットは上がっていたのに、蓋を開けてみたら全然違うものになってました(笑)」
「それでも生きていかなきゃいけない」それがきっと希望
荒川さんや風間さんは過去に赤堀作品への出演があるけれど、三宅さんと吉岡さんは今回が初。
赤堀作品経験者として、何かアドバイスは? と伺うと「ないですないです!」と笑った。
「だって、本が上がっていないんですから。アドバイスのしようがないですよ。『大丈夫、きっと面白い本が上がってくるから』って言うしかないですね」
赤堀作品と言えば、頭に浮かぶのは何気ない社会の片隅を切り取った人間の闇を鋭くえぐるリアルなストーリー。
特に『葛城事件』は“後味が悪い映画”と言われ大きな話題にもなった。
「赤堀作品は、好きな人はすごく好きだし、逆に受け付けないという人も多いですからね。でも、日常を当たり前に描いていて、ニュースにもならないような事件や引きこもりなども特別扱いせず、ごく普通に描くところが魅力だと思います。
きっと観る人は作品を観て希望が欲しくなるんだと思うけど、赤堀さんは、“希望なんてねぇよ”っていう人なんですね。
それでも生きていかなきゃいけない、それがきっと希望なんでしょうね」
プライベートの世間話も無駄じゃない
普段、プライベートでもよく飲みに行くというお二人。そこで話す世間話が舞台に反映されることもあるのだとか。
「そんなかっこいい感じではないですよ。赤堀さんに最近面白いことない? って聞かれたので、通っていたサウナでの話をしたんです。
僕が行く時間は大抵テレビでゴルフ番組が流れていて、その頃はちょうど韓国の女子ゴルファーが旬で、サウナにいるおじさんたちの会話はそればっかりなんですって話をしたら、次の舞台で『こいつら、こんなピッチピチの服着てゴルフしやがって』って、セリフがあって。
あぁ、世間話も無駄にならないんだなと思いました」
「役作りで役が抜けないこと?ないない(笑)」
ドラマ、舞台、映画と大忙しで、撮影時期がかぶることも多い荒川さん。役作りや、膨大な量のセリフを覚えたりするのは大変な作業だと想像するが…。
「僕は、本を読みながらぼそぼそと声に出して覚えています。家に居るとテレビを見たりスマホをいじってしまうので、喫茶店に行って台本を読みます。
周囲の邪魔にならない程度に、ボソボソと声に出して覚えています。役作りで役が抜けなくなること? 全然ないですよ。ないない(笑)。だって、怖くないですか? 殺人鬼の役をやったら殺人鬼が抜けないって(笑)。そうゆうことはありませんよ」
舞台『白昼夢』は、本多劇場にて、上演予定。「個人的には三宅さんと風間さんがどんな化学反応を起こすかがとても楽しみ」と話す荒川さん。
無事、脚本は上がるのか? 荒川さんは引きこもり役を演じるのか? 今から上演が楽しみでならない。
PHOTO Isamu Ebisawa
TEXT Satoko Nemoto
荒川良々
1974年生まれ。大人計画所属。
舞台、テレビドラマ、映画、CM、ドキュメンタリーなどマルチに活躍し様々な個性を発揮。代表作に映画「予告犯」「ハード・コア」「決算!忠臣蔵」、TVドラマ「重版出来!」「いだてん~東京オリムピック噺~」など多数。
2020年にNetflixのホラー作品「呪怨:呪いの家」で主人公を熱演。現在「俺の家の話」(TBS)が放送中。
M&Oplaysプロデュース「白昼夢」
作・演出 赤堀雅秋
出演 三宅弘城、吉岡里帆、荒川良々、 赤堀雅秋、風間杜夫
公演 3月20日(土・祝)~4月11日(日)
会場 本多劇場(下北沢)