平成元年生まれの男女が出逢い、別れ、そして平成の終わりに再びめぐり逢うまでの18年間を平成史とともに描き出した映画「糸」が近日公開される。
日本を代表するシンガーソングライター中島みゆきの名曲「糸」に着想を得た物語の中で、主人公の親友・高木玲子役を演じた山本美月さん。
出演作が続く山本さんに、作品について、そしてご自身の「平成」とはどんな時代だったかを振り返ってお話しして頂きました。
自分と真逆の役柄を演じる苦労 ロケで体調を崩すも
「最後のシーンを知ってから役作りに入ったので、最初玲子は分かりやすく性格が悪い子なのかと思いました」と、話し始めてくれた山本美月さん。
今回山本さんが演じる高木玲子は主演の小松菜奈さんが演じる葵を支える親友であり同僚。
東京のキャバクラで出逢ったふたりはその後シンガポールで事業を起こすのだが…。
「最近は “いい子” を演じることが多かったので、玲子のようなキャラクターは初めて。玲子は人間味あふれる子ですね、お客様からクレームを受けても自分が悪くないと思ったら絶対に謝らないような真っ直ぐな子です。
そういう面はかっこいいなと思いつつ、人に誤解されやすい子だなと思いました。
でもお酒が飲めない葵が客に飲めと言われて困っていたら変わりに一気飲みするような姉御肌で優しい部分もあって、何より葵のことが大好きなんですよね。
だから玲子の最後のシーンを知ったときは悲しかったですし、本当に玲子は自分のことしか考えてなくて性格が悪いんじゃないかな、と。
でも監督からはそうは演じないでくれと言われて、頭を切り替えるのが難しかったです」
玲子と山本さんご自身が似ているところを伺うと「似てるところはあんまりないなぁ」と笑う。
「私は仕事なら納得いかなくても我慢しちゃうし、玲子のようにテンションも高くないので、まずテンションを上げるのが大変でした。
あとクラブで踊るシーンがあるんですけど、私は本当にリズム感がないから必死(笑)。毎日クラブミュージックを聞いてリズムを取ったりしてました。
英語のシーンもありましたし、今回の撮影は振り返ると大変なことが多かったかもしれません」
実際、真夏のシンガポールロケは過酷で撮影後に体調を崩してしまったという山本さん。
「最後のセリフまでは言えたんですけど、帰りの空港に向かう途中で喉が痛くなって、それから2週間ほど声が出なくなってしまって。
でも、シンガポールロケは楽しかったこともたくさんありました。まずロケ弁が美味しかった(笑)。とくに海南鶏飯が美味しかったです。
あとは撮影の合間にハジレーンに行っておしゃれな壁の前で写真を撮ったり、菜奈と中華街にお土産を探しに行ったり、タピオカを飲んだりしました」
小松菜奈と二度目の共演「先輩と後輩のような空気感」
小松菜奈さんとは2度めの共演。「菜奈と私の関係と、葵と玲子の関係はリンクするものがある」と山本さん。
「私と菜奈の歳の差も葵と玲子と同じくらいで、いい具合に先輩後輩関係みたいな空気感が出せたと思います。
それと菜奈と初めて共演したときは、彼女がまだお芝居2作目とかで。何もわからないことだらけで頑張ってる菜奈の姿を見ていたので、キャバクラで玲子が葵を助ける部分とリンクしていた気がします。
それに何より菜奈自身がさりげなく悩みを打ち明けてくれたりするところが守ってあげたくなる女性なんです」
立て続けに出演ドラマ、映画が続き、同時にモデル業もこなす山本さん。テレビで、スクリーンで、誌面でとその姿を見ない日はないというくらい活躍がめざましい。
それは平成という時代を山本さんが全力で駆け抜けた何よりの証、山本さんが繋いできた『糸』そのものだ。
がむしゃらに20代を過ごした平成。令和は自分に本当に必要なものを見極めて健やかに過ごしたい。
「平成はがむしゃらに過ごした気がします。自分に何が向いているのか、色々試した20代でした。
例えば、バラエティでMCをやってみたけれど、やった上で自分には向いてないなと思うし、お芝居をするにも自分にはもう少し余裕が必要だなとわかってきました」
それは仕事をセーブするということではなく、ちゃんと確認することだと山本さんは続ける。
「たくさんお仕事をいただいてとてもありがたいのと同時に、お店が空いてる時間に家に帰れることも少なくなってしまって。
帰ってからも台本を読みながら寝落ちしてしまい、夢の中でも撮影していたり…。
自分に余裕がなくていっぱいいっぱいになってしまう部分があるので、もっとペース配分が上手くなりたいです。
朝普通の時間に起きて、大好きなペットの“こつめ”と散歩をしたり、家事をしたり。そんな普通の生活とお仕事を両立させた、健やかな生活ができるようになりたい。
そのためにもスケジュールをちゃんと確認して、これからも確実に繋がる『糸』を見つけていきたいです。
色んな人に出逢って、色んな色をした糸の中から自分に合った糸を選ぶ、それが令和の目標です」
最後に、もしお休みが取れたら…?と伺うと。
「温泉に行きたい! 2泊したいなぁ。おいしいものを食べて、温泉に浸かって、お部屋でお昼寝して…、そんな風にだらだら過ごしたいです(笑)
山本美月
1991年生まれ。2009年7月、第1回東京スーパーモデルコンテスト「グランプリ」「CanCam賞」受賞。2009年から「CanCam」の専属モデルとして活躍。おもなドラマ出演作、2019年はカンテレ・フジテレビ系「パーフェクトワールド」でヒロインを務め、2020年は読売テレビ・日本テレビドラマ「ランチ合コン探偵~恋とグルメと謎解きと~」、カンテレ・フジテレビ系「U-NEXT presents あと3回君に会える」では主演を務める。出演映画は2012年「桐島、部活やめるってよ」をはじめ、2017年映画「ピーチガール」、2018年「去年の冬、きみと別れ」、「友罪」、2019年「ザ・ファブル」など多数。
PHOTO / Hirohiko Eguchi (Linx.)
TEXT / Satoko Nemoto
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「糸」
監督 瀬々敬久
脚本 林 民夫
出演 菅田将暉、小松菜奈、山本美月 他
近日公開予定
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