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三吉彩花 ずっと抱いている家族コンプレックス… 30歳では新章をスタートさせたい 映画『本心』

平野啓一郎の同名小説を原作にした映画『本心』が公開される。本作は、急逝した母が実は“自由死”を望んでいたことを知り、その母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせるという、未知の領域に足を踏み入れた青年・朔也と、彼を取り巻く人間の【心】と【本質】に迫るヒューマンミステリー。三吉彩花さんが演じるのは朔也の母が生前親しくしていた友人であり、彼女の素顔を知るキーパーソン“三好彩花”。「こんなに心が苦しかった現場は初めて」と話す三吉さんに作品に対する想い、今の【本心】を伺った。

運命を感じた“三好彩花”を背中に感じ続けた撮影期間

「運命というか、ご縁を感じ得ずにはいられませんでした」と、出演のオファーがきた時の気持ちから話し始めてくれた三吉彩花さん。

「お話をいただいた頃、ちょうど私自身も“私は何がしたいんだろう?私って何なのだろう?”と悩んでいる時期でもありました。俳優やモデルとしての“表現者”としてもそうですし“自分”としても何か迷っているというか、ポジティブなこともネガティブなこともいろんなことを考えていて。さらに、いただいた脚本に書かれていた役名が“三好彩花”。もう、すごい衝撃でした。運命とはこのことかと、不思議な気持ちになったのを覚えています」

三吉さん演じる“三好彩花”は、主人公・朔也の母の素顔を知るための鍵を握る人物であり、過去の傷を抱えるミステリアスな女性。撮影を振り返り「こんなにも心が苦しかったのは初めてで戸惑った」と心の内を明かしてくれた。

「私には家族というコンプレックスがありました。幼少期の記憶から、大切にしたくてもできない、どう向き合っていいかわからないという想いをずっと抱えていたんです。でも、三好彩花を演じながら、もし私が今、家族と向き合うことができたなら、たとえコンプレックスを乗り越えられなくても、何か少しでもアクションを起こすことができたなら、それがすべて三好彩花という役に投影できるかもしれないと思ったんです。なので、家族と向き合う場を設けたり、家族について改めて考えたり。三好彩花という役を理解する、体現するのと同時軸で自己探究をする日々でした」

常に背中合わせで三好彩花がそこにいるような撮影の日々は、心身ともに削られる現場だったと振り返りつつ「三好彩花は今の私に必要な役だった」と三吉さん。

「家族との関係が一気にポジティブに解消されたわけではないけれど、これまで進めなかったラインをひとつ越えることができたのは私にとって大きな一歩でした。完成作品を観たとき、ちょっとだけ安心したというか、ホッとした自分がいて。改めてこのタイミングでこの作品に携われて良かったと思いました」

亡くなった人をVRで蘇らせられる未来 利用するかどうかという問いには…

原作小説では2040年が舞台の未来物語として描かれていた本作だが、想像を遥かに越える速度でテクノロジーが発展していることを鑑み、本作では舞台を2025年へと前倒しに。亡くなった人をVRで甦らせたり、リアル・アバターという仕事が存在したりという世界が、もう遠い未来ではない話として描かれている。

「最近はAIも身近になりましたし、SNSを通じて全世界の人とのコミュニケーションも簡単になりましたよね。そういった部分が必要なことももちろんありますが、でも、私が大事にしたいのはやっぱり実際にお会いして、お話して…という時間。人間関係を築く上で実際に対話して見えてくる部分ですとか、感じられる雰囲気を大事にしたいと思っているので、アナログな部分は失われてほしくないです。なので、もしVRサービスが実現化されてもきっと利用しないと思います。亡くなってしまった愛猫ちゃんやおじいちゃんを蘇らせられたらとも想像しましたが、今は想い出のまま大切な記憶として残しておきたいです」

AIで心を再現したとき、人は何を失い、何を見つけるのかを私たちに問うこの作品。改めて作品の見所を伺うと。

「監督はじめ、出演者全員が魂を込めて緻密に丁寧に作り上げた作品です。観てくださった方が“自分にとって大事なものって何だろう?”“自分って何なのだろう?”と、考えるきっかけになったり、自分にとって本当に大切なものを見出してもらえたら嬉しいなと思います」

最後に原作の舞台として描かれていた未来まではあと15年ちょっと。そのときの三吉さんを想像してもらった。

「えーと、42歳?どうなっていてもいいですね(笑)。私、あまり先のことは考えないタイプなんです。やりたいことは年齢に関係ないと思いますし、今、その時にやるべきことができたらと。近い目標でいえば海外での活動をもっと増やしていけたらと思っています。もうすぐ30歳ですが、そこからは自分の新章スタートを目指しているので、もっと自分らしいこと、面白いことを発信していけたらいいなと思っています」

『本心』

©2024映画『本心』製作委員会

原作 平野啓一郎「本心」(文春文庫/コルク)
監督・脚本 石井裕也
出演 池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子他
公開 11月8日(金)TOHOシネマズ日比谷他

\三吉彩花さんって?/
1996年生まれ。2010年、雑誌「Seventeen」専属モデルに抜擢。同誌卒業後も「25ansウェディング」カバーガールなど数々の雑誌モデルを務める。2012年、映画『グッモーエビアン!』で「第67回毎日映画コンクールスポニチグランプリ」新人賞受賞。2013年、映画『旅立ちの島唄~十五の春~』で「第35回ヨコハマ映画祭」最優秀新人賞受賞。近年では、Netflix「今際の国のアリス」など話題作に多数出演。2023年のAmazonOriginal映画『ナックルガール』ではボクサー役に挑戦。2024年7月、映画『先生の白い嘘』が公開。

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