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間宮祥太朗&矢本悠馬『破戒』で共演 プライベートでも親友「仕事場の自分は恥ずかしい」

日本文学史に残る名作『破戒』が起稿されたのは1905年のこと。今から120年近くも昔の作品でありながら、そこに描かれている人間の愚かさや生きる苦しみは今と何ら変わらない。それゆえに、前田和男監督は令和の時代に本作を映像化することに意義深さを感じたに違いないし、主人公・丑松を託した間宮祥太朗への想いも相当なものだろう。

演じた本人はこの大役にどう向き合ったのか。丑松の親友・銀之助を演じた矢本悠馬とともに話を伺った。

【衣装】MUZE GALLERY、AIVER、opposite of vulgarity

テーマは部落差別 世界の差別やいじめと通ずるシンプルなもの

――まずは出演のお話をいただいたときのお気持ちを聞かせてください。

間宮 原作を読んでいなくて判断できなかったので、まず原作本、そして準備段階の台本を読ませていただきました。部落差別を扱っていることもあり、耳馴染みのない言葉が多く、注釈を確認しながら読了までには時間がかかりましたが、物語の根底に流れているものがすごくシンプルで力強いところに惹かれました。同時に、自分が出演することによって、若い世代にこの作品を知ってもらえることに深い意義を感じました。

矢本 僕がお話をいただいたのは、祥太朗の主演が決まった後でしたので、二つ返事でした。しかも、一番の理解者であり親友というポジションは、プライベートでの祥太朗と僕の関係性とまったく同じ。自分にとってプラスにしかならない作品だと直感しました。撮影に入ってからも居心地が良く、ストレスなく役に入れました。でも、普段から仲が良いがゆえに、“仕事場の自分を見られるのが恥ずかしい” という感覚がありました(笑)。

――部落差別を扱った作品を、今の時代に映像化することをどう思いましたか?

間宮 部落差別は、この作品においてはメインのテーマではあるけど、あくまでも “差別” のなかのひとつのカテゴリーでしかないですし、今も世界にはいろいろな差別が存在します。ですので、“昔はこんな世の中だったんだね” という感想に留まらない作品になるだろうと感じました。

矢本 差別以前に、学校単位でもいじめってありますよね。今現在、学生生活を送っている子どもたちのなかにも、いじめで苦しんでいる子がいると思うし、大人になってもいじめや嫌がらせなど、なかなか無くならないものかもしれませんが、できるだけ相手を思いやる想像力を持ってほしいですし、この作品がそのきっかけになってくれればと思います。作中で差別に立ち向かった丑松も、物語終盤はハッピーエンドに向かっているように見えるけど、当時の部落差別は一生ついてくる問題でしたから、その後の人生でも大変なことはたくさんあったはず。そこに想像を巡らせることも、人を思いやる気持ちを持つことにつながるかもしれません。

間宮 “世界は結局自分の主観でしか見られない” だから主観を広げる

――今まさにいじめや差別に悩んでいる人に声をかけるとしたら?

矢本 難しいですけど、ひとりで乗り越えようなんてかっこつけなくていいと思うんです。家族でも恋人でも友だちでもいいから、信頼できる誰かに相談してほしいですし、もしも相談する勇気が持てないとしても、生きてさえいれば状況や時代は変わりますから。それと、言葉にできないSOSに気付いてもらえず孤独を感じている人もいるかもしれないけれど、みんな自分の人生を生きるのに必死なだけだと思うので、自分から言葉に出すことで解決につながることは多いと思います。

間宮 孤独感は、本人の感じ方でもあるけれど、この作品を通して改めて感じたことは、“世界は結局自分の主観でしか見られない” ということです。丑松も銀之助も、その他の登場人物も、みんな同じ時代、同じ場所に生きているけれど、それぞれに見えている世界はまるで違うものだと思うんです。たとえば、自分が部落出身であるだけで、ひとつの見方が構築されるし、どんなに自分を客観視しようとしても、“引きのカットで自分を見ている” だけに過ぎなくて、絶対に “主観の域” は出られないと思うんです。だけど、“主観の領域を広げる” ことはできる。知識を身に付けたり、想像力に磨きをかけたり、自分のなかに芽生えた感情を言語化したりするうちに、少しずつでも視野は広がっていくと思います。自分の出自を告白した丑松、それを受入れた銀之助が、“ものの見方” が変わったことで行動が変わっていったように、視野を広げることによって、今抱えている悩みをちっぽけに感じられることもあるかもしれません。

矢本「お笑い芸人になりたかった子ども時代 先生が場を与えてくれた」

――丑松も銀之助もすごく素敵な先生ですが、学生時代にお世話になった先生の思い出があれば聞かせてください。

矢本 僕は子どものころお笑い芸人になりたかったんです。友だちと休み時間にコントを作っていて、あるとき先生に “いいコントができたから授業中にやらせてくれませんか?” ってお願いしたら、1時間の授業時間のうち30分くれたんです。しかも、そのコントがウケたので、学級委員や飼育委員のような役割のひとつとして、“劇係” っていうのを作ってくれて。心も脳もやわらかい小学生の時にそうゆう場所を与えてもらえたことは、今の俳優人生にもつながっている気がします。

――微笑ましいエピソードですね(笑)。では、最後に完成した作品をご覧になったときのお気持ちを聞かせてください。

間宮 前田監督は、役者の感情の機微を細部まで拾ってくださる方なのですが、編集されたものを観てそのことを再確認させられました。たとえば、役者の後頭部しか映していないカットでも、そのときの表情まで想像させてくれる。現場ではサクッとOKが出て、“本当に大丈夫だったのかな?” と不安になったこともありましたが、完成した画を観たらすごく納得できました。

矢本 監督やスタッフさんのおかげで本当にサクサクと進んだけれど、完成した作品を観たらすごく画がキレイでした。ロケ地は京都で、とても空が広かったので、風景の美しさも楽しんでもらえると思います。

Profile
間宮祥太朗
1993年生まれ。日本テレビ「スクラップ・ティーチャー〜教師再生〜」で俳優デビュー。2020年には、NHK「麒麟がくる」にて明智光安の嫡男で後に光秀と共に本能寺の変を引き起こす明智秀満役を好演。近年の出演作は、「Red」、「東京リベンジャーズ」など。4月から放送中のフジテレビ「ナンバMG5」で連続ドラマ初主演を果たす。

矢本悠馬
1990年生まれ。2003年、映画「ぼくんち」でスクリーンデビュー。2015年、「ブスと野獣」で連続ドラマ初主演を務める。近年の出演作は、「今日から俺は!!劇場版」、「新解釈・三國志」、「映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」などの映画から、舞台、ドラマ、CMと幅広く活躍中。

『破戒』

©全国水平社創立100周年記念映画製作委員会

原作 島崎藤村『破戒』
監督 前田和男
脚本 加藤正人、木田紀生
出演 間宮祥太朗、石井杏奈、矢本悠馬、高橋和也、小林綾子、七瀬公、ウーイェイよしたか(スマイル)、大東駿介、竹中直人/本田博太郎/田中要次/石橋蓮司/眞島秀和
公開 7月8日(金) 丸の内TOEI 他全国公開

Photo Mizuaki Wakahara
Text Reiko Matsumoto
間宮さん STYLING Shingo Tsuno(impiger)/HAIR & MAKE Akane Miyake
矢本さん STYLING Kan Fuchigami/HAIR & MAKE Yugo Yasoshima

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