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中条あやみ主演『水上のフライト』 あきらめないオリンピックへの夢

STYLING/RisaUeda(HITOME)HAIR&MAKE/TomokoYamaguchi(HITOME)

『引っ越し大名!』などの脚本家・土橋章宏が、パラカヌー日本代表選手・瀬立モニカさんとの交流を通じて作り上げたオリジナルストーリー、映画『水上のフライト』が公開される。

かつては将来を約束された走高跳選手として活躍するも、不慮の事故により下半身麻痺となった遥が、パラカヌーと出会ったことで自らの道を切り開いていくというヒューマンドラマ。

主人公・遥役は中条あやみさん。パラカヌーに体当たりで初挑戦したという彼女に作品にかけた想いを伺った。

『周囲の人に支えられて』 主人公と自身の経験重なる

「なんで私にこの役が!?と、不安しかありませんでした」

オファーを受けたときの心境を伺うと、こう答えてくれた中条さん。

カヌー経験があるわけでもなく、まして身体的なハンディキャップも持っていない。そんな私にパラカヌー選手という役を務めあげることができるのだろうかと自信が持てなかったと話す。

でも役を引き受けたのは台本を読んで主人公の前向きなキャラクターに強く惹かれたとともに、周囲の支えがあったからだそうだ。

「私が出演を悩んでいるとき、事務所の方が『あなたにこの役が来たってことは、あなたにこの役をやって欲しいと思っている人がいるってこと』と背中を押してくれて。

作品中の遥が周囲の人に支えられてパラカヌーに挑戦するように、私も周囲に支えられてチャレンジすることができました」

実際、初めてとなるパラカヌーは思っていたよりも大変だそうで、最初はカヌーに乗ることさえ困難だったとか。

「最初は大学のプールをお借りして練習したのですが、細いカヌーは安定感が少なくすぐに転覆しちゃうんです。

それに、撮影に入る前からある程度はジムで体を鍛えていたのですが、練習から帰ると身体中が筋肉痛。何度ももう無理だって諦めそうになりました。

でも、実際に川に出てみると川の流れを利用して漕げるようになったり、風がとっても気持ち良くて。水と一体化している感覚が気持ち良くて、それからは上達が早かったように思います。

結果、カヌーの先生からは『オリンピックに出る才能あるよ!こっちで頑張らない?』ってスカウトされました(笑)」

障害を『個性』『強み』に 前向きに頑張る人たち

この役を演じたことで、パラ競技の見方も障害者の方たちへの考えも変わったという中条さん。

「これまではパラリンピックは健常者じゃないから大変とか、かわいそう、悲しい…といった複雑な目で見ていた自分がいました。

でも実際にカヌーの先生や、車椅子の先生、そして遥のモデルとなった瀬立モニカさんにお会いして感じたのは、みなさんとても前向きだということ。

自分が人と違うということを『個性』『強み』と捉えて、楽しみながら競技に向かっているんです。そこにネガティブな考えはまったくなくて、それを知ったときに今までの自分の考えが恥ずかしいと思いました」

それは役作りにも反映されているという。

走高跳の選手としてオリンピックも有望視されていた遥が事故に遭い下半身付随になる。普通ならそこが一番の絶望するポイントだと思うのだが、この映画は違う。

中条さん自身今でも思い出すと泣きそうになるというのが、遥が小澤征悦さん演じるカヌーのコーチに「パラカヌーでオリンピックを目指さないか?」と誘われるシーンだ。

「遥にとって走高跳は自分のすべてでした。それを歩けなくなったからといって、じゃカヌーにするなんてそんな簡単なものじゃない。歩けなくなったことよりも、夢を奪われたことに遥は絶望したんです。

もし自分が誇れるものを奪われたら?そう考えたらとても苦しくて感情が爆発してしまいました。何に怒ってるのかわからないくらい苛立ったのを覚えています」

最初はできなくて当たり前 ありがとうの気持ち忘れない

私には無理…と思ったときも真面目に頑張っていれば必ず誰かが
見ていて手を差し伸べてくれる!

数多くの映画やドラマの主演を務め、順風満帆に見える中条さんだがこれまで幾度も挫折を味わったという。

「今でも毎回新しい現場に入ると挫折の連続ですが、一番の挫折は10代の頃ですね。

オーディションを受けるたびに傷つく言葉を言われたり、落選続きで。自分にはこの仕事は向いてないんじゃないかと凹むことがたくさんありました。

でもやっぱり諦めたくなくて、ただひたすらオーディションを受けたのを覚えてます。

きっと自分からチャンスを掴みにいきたいという気持ちさえブレずに、素直に真面目に頑張って努力していれば、その姿を見てくれている人は必ずいると思います。

私も最初は演技のことなんて右も左もわからなかったし、今でも業界用語がわからないときは周りに聞きながらドラマを撮り終えたりして(笑)。

みんな最初はできなくて当たり前だから、わからなかったら素直に教えてもらって、ありがとうの気持ちを忘れない。

そして何より地道に努力すれば夢は逃げないと思うから『どうせ私なんて…』とネガティブな気持ちになったときは、もう一度自分の夢を見返して頑張ってほしいです」

最後にこれから中条さんが掴みたい夢を伺うと。
「海外の作品に出てみたいですね。海外で演じてみたいな」

中条さんが海外でも活躍している姿が今から楽しみだ。

TEXT SatokoNemoto
PHOTO MizuakiWakahara(D-CORDMANAGEMENTLTD.)


中条あやみ
1997年生まれ、大阪府出身。
2011年より雑誌Seventeenの専属モデルとして活動。2012年の連続ドラマ「黒の女教師」で女優デビュを果たす。
2014年に「劇場版零〜ゼロ〜」で映画初出演にして初主演を務めた。
2017年よりCanCam専属モデルとしても活躍中。
2017年には「チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜」の演技で、第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
「ニセコイ」「雪の華」など主演映画多数。

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「水上のフライト」

監督 兼重淳
企画 土橋章宏
脚本 土橋章宏、兼重淳
出演 中条あやみ、杉野遥亮、高月彩良、冨手麻妙、大塚寧々、小澤征悦 他
公開 近日公開
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