タブロイド誌を賑わす恋多きセレブとしての印象も強い、オリビア・ワイルド。他人から噂されたり、どんなに非難されても、自分の本業で結果を出して覆すその努力を惜しまずに仕事に向き合う姿勢と、メンタルの強さから学びたい。
“完全なる街”に疑問を抱く…夫の極秘プロジェクトとの関係は?
舞台は1950年代のアメリカ・カリフォルニア州。清潔で明るくて安全という、最高の住環境で生活するアリス・チェンバー(フローレンス・ピュー)は、愛する夫のジャック(ハリー・スタイルズ)と平穏な日々を送っていました。
ジャックは極秘の「ヴィクトリー・プロジェクト」に関する仕事をしていて、アリスはその業務について質問しますが、彼は守秘義務を盾にその仕事に関して口をつぐみ、彼女はそんなジャックの対応にそこはかとなく違和感を覚えていました。
そんなある日、アリスは仲の良かった隣人が赤い作業着を着た男達に連れ去られるのを目撃します。それ以降、彼女の周りで頻繁に不可思議な出来事が起こるようになり、次第に彼女は幻覚や幻聴に悩まされ周囲の人々からも心配されるようになります。そしてアリスはこの完全なる街に疑問を抱くようになるのですが…。
エッジが効いたBGMが恐怖をそそる映画版
ポップでリッチな大企業の住宅地に住む人々は笑顔が絶えず、そのドリーム・リゾート・プレイスでの生活を謳歌しているように見えますが、この街はどこか現実感に乏しく、不自然な共同体としての成り立ちが次第に観客に伝わってきます。
専業主婦のアリスは昼間に主婦仲間とバレエのレッスンを受けるのですが、その映像の対称性と規律正しいフォーメーションに、この街の作為的に意図されたバランスと恣意的な揺るぎのない秩序を感じました。近隣住民の不自然な笑顔や行動、そして理由も分からず定期的に建物が揺れる謎の現象が、アリスの不安を加速度的に増長させていきます。バレエのレッスン中に鏡に映った自分の存在に戸惑い、現実と非現実の世界を行き来するアリスは、不思議な国に迷い込み徐々に精神が崩れていくのです。
クラシカル(古典的)とアバンギャルド(前衛的)な映像の融合とポップな色使い、そして既存の劇版とは異なるエッジが効いたBGMが恐怖をそそる、「ドント・ウォーリー・ダーリン」を是非劇場で体験してください。
恋多きセレブは仕事の成果で自らの価値を示す
そして、本作の監督であり女優のオリビア・ワイルドは、アメリカ・ニューヨーク生まれ。父親も母親もジャーナリストで、幼い頃からアカデミックな教育を受けて成長し、高校を卒業してから、かねてより興味のあった演技を勉強するためにアイルランドに留学して演劇学校に通います。
その後、オーディションを経て映画「ガール・ネクスト・ドア」に出演。そしてドラマ「TheO.C.」に出演して注目を集め、ドラマ「Dr.HOUSE」のレミー役でブレイクします。そして彼女は、「トロン: レガシー」「TIME/タイム」「ラッシュ/プライドと友情」「her/世界でひとつの彼女」「リチャード・ジュエル」などの映画に出演して地道に女優としてのキャリアを積んできました。
一方プライベートでは、2009年のマキシム誌による「セクシーな女性100人」の1位に選出された頃からタブロイド誌を賑わせるようになり、19歳の頃に結婚していた映画プロデューサーのタオ・ラスポリと離婚し、俳優のジェイソン・サダイキスと婚約。
しかし、本作に出演している元ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズとの交際をパパラッチされたり、ジェイソンとは破局して裁判沙汰にまでなってしまうのです。彼女はタブロイド誌に度々登場する恋多きセレブであることに間違いはないのですが、実力で自分の地位を築くために監督業にも進出。初監督作「ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー」が批評家から絶賛され大ヒット。
オリビアは、他人から噂されたり非難されたりしても、本業に対する評価で自らの価値を揺るぎないものにしてきたのです。彼女のように強く生きるのは難しいことかもしれませんが、他人の意見や噂を覆すほどの仕事に対する成果を出すという強さは、見習うべき部分があるかもしれません。
ドント・ウォーリー・ダーリン
監督 オリビア・ワイルド 脚本 ケイティ・シルバーマン 出演 フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、オリビア・ワイルド、ジェンマ・チャン 他 公開 11⽉11⽇(金) 全国ロードショー
この記事を書いたひと
コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。