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齊藤工監督『フードロア』 お弁当に詰まった愛情と優しさ描く

Takumi Saitoh STYLING yappy (juice & juicy)
HAIR & MAKE  Shuji Akatsuka (MAKE-UP ROOM)

「ゲム・オブ・スロンズ」のHBO(R)のアジア部門HBOアジアのオリジナル・シリズとして、アジア各国の気鋭監督が集結し “食” をテーマに1話完結で描かれたアンソロジーシリーズ「フードロア」が、2020年にBS10スターチャンネルにて独占日本初放送される。

日本の作品『Life in a Box』の監督を務めたのは前シリーズ『フォクロア:TATAMI』に引き続き齊藤工さん。
メインキャストのひとり、絵本作家を演じる安藤裕子さんとともに作品への想いを伺った。

「フードロア:Life in a Box」は、東京から離れた電車の中、偶然乗り合わせた4人の乗客たちのストーリー。

スランプに陥った絵本作家(安藤裕子さん)、妻を亡くしたばかりの男(安田顕さん)と、彼の娘(川床明日香さん)、引退した年老いたプロレスラー(ザ・グレート・カブキさん)ら、4人の乗客の人生が電車の中で交錯し、長い間忘れていたある食にまつわる記憶が呼び起こされるという物語だ。

齊藤監督に今回、テーマにお弁当を選んだ理由を伺うと。

齊藤 広島の幼稚園にボランティアへ行った時、食堂の人たちが僕たちに塩むすびを作ってくれたんです。その優しさと絶妙な塩加減に感動して、涙が出てきたんです。

この話を脚本家の金沢さんに話したらそれを基にしようということになりました。

そしたらロケ地の高崎には40年近くお一人でお弁当を作ってらっしゃるナミさんという方がいて。僕も実際にお会いして、お弁当を食べさせてもらったんですが、すごく美味しいんですよ。

一見ごく普通のお弁当なんですが、一つひとつが丁寧に作られていて作り手の愛情がこんなにも伝わるものかと感動しました。

それでナミさんをこの作品の主人公のモチーフにしようと。

今回のキャスティングは神がかっていたと齊藤さんは話す。

齊藤 メインキャストの3組の方たち、すべてが物語とご自身の実体験がリンクするとおっしゃってくれて。

例えば安田顕さんも実際に中学生の娘さんがいて、奥様から“私にもしものことがあったら、あなたは何もできないんだからせめて卵焼きを作りなさい”と強要されて卵焼きを作ったこと。

ザ・グレート・カブキさんには団体を抱えていたときに大変な想いをしたから、この脚本は腹が立つくらい芯を喰われた気がすると言われました。

「そして、私も引き寄せられたひとりです」と笑うのは安藤裕子さん。

安藤 脚本を読んだとき “私のことだ!”って思いました。

普段から曲や絵をつくっていて、これまでもずっと物づくりをして生きてきたんです。

それが楽しかったはずなのに、ある日突然何もつくれなくなった自分に出会ってしまった。

技はあるので、依頼されれば書けるし、つくれる。でも全然ワクワクしない。胸が騒がないんです。

“あ、終わったな”って思いました。

ちょこちょこライブはやっていましたが、他に仕事を探さねばと思っていた頃、齊藤さんに声をかけて頂いたんです。

齊藤 オフィシャルのオファーが行く前日にばったり会ったんですよね。

この役にこのタイミングで出会えたのは運命。演じるというより素の私がそこに。−安藤

安藤 “裕子さんにお願いしたいことがあるんですが、今は言えないので明日連絡します!”って(笑)。

きっと曲の依頼かな? と思っていたらまさかの出演で、しかも役は自分にぴったり。

これはまた物づくりに戻るチャンスだと思ったのと同時に、誰かに名前を呼んでいただけたことがすごく嬉しかった。

自分に興味がなくなるって、とても怖いんですよ。

今、自分が消えても誰も気づかないだろうなって透明人間になった気分になるんです。

だから、齊藤さんから指名を頂いたとき “あ、私ここにいるんだ”ってすごく嬉しかったですね。

齊藤 表現の仕事をしている人たちは、つくりたいものと時代のニーズのギャップでみんな葛藤していると思うんです。

裕子さんもそういう部分を僕と同じ感覚で感じ取ってくれて、この方に演じて頂くのが前々から決まっていたような必然性を感じました。

劇中のイラストは実際に裕子さんが描いたり、アレンジして下さったもの。

裕子さんとザ・グレート・カブキさんという本業が俳優さんではなく、本当に作品をつくり続けているお二人がそこにいてくださることで“もう本物じゃん!”っていう現場になりました。

安田顕さんも演じているのか、素なのかがわからなくなるほどナチュラルにそこに存在して下さった。

僕としては、一役者として入れない生きた空間、人たちが詰まっているとっても素敵なお弁当箱のような作品ができたと思っています。

お弁当と映画は似ている。こだわりのおかず(キャスト)で最高のお弁当ができました。−齊藤

安藤 素材ありきってことですね。私は具に例えたら何だろう?

齊藤 裕子さんは華があるから卵焼きかな。ザ・グレート・カブキさんはおにぎり。安田顕さんは細かいところまで愛情を注いでくださるということでゴマかな。

僕? お弁当を結ぶ紐にでもなれたら(笑)。

劇中で作られるお弁当は齊藤さんの子供時代のお弁当に近いという。

齊藤 僕は小学校がシュタイナー教育という当時としては変わった教育方針で、お弁当もマクロビでした。だからお弁当箱の中は玄米や煮物でまっ茶色。

当時はその光景がとても苦しかったんですが、年齢を重ねた今、それは親からのラブレターだったんだと思えます。

安藤 私も幼稚園のとき、周りはみんな可愛いお弁当なのに、私のは牛肉の佃煮が入った地味なお弁当で。恥ずかしくて蓋で隠して食べてたらクラスメイトに見つかって、“何これ、茶色い!”って言われたのが衝撃でした。

その話を母にしたら、小4くらいのときに“あのときは申し訳なかった”ってチューリップ型に切られた海苔が貼ってあるおにぎりを作ってくれたんです。

でも、そのときは逆にそれが恥ずかしくて、また隠して食べて(笑)。でも子供ながらに親の優しさは伝わってきて… 大事な思い出ですね。

齊藤 お弁当は作る側、食べる側、それぞれに誰もが物語を持っていると思います。この作品を見て、忘れかけてた懐かしさや愛情を思い出してもらえたら嬉しいです。

齊藤工
1981年生まれ。2001年俳優デビュー。
公開待機作に「糸」、「シン・ウルトラマン」など多数。齊藤工名義でFILMMAKERとしても活躍し、初長編監督作『blank13』では国内外の映画祭で8冠を獲得。
被災地など劇場体験が難しい地域の子供達に映画を届ける移動映画館を主催するなど活動は多岐にわたる。

安藤裕子
1977年生まれ。
2003年7月にミニ・アルバム『サリー』でデビュー。透明感あふれる歌声で人気を博し、05年に「のうぜんかつら(リプライズ)」がCMソングに起用され話題に。ドラマ主題歌やCMなどへの書き下ろしや楽曲提供、2014年の映画『ぶどうのなみだ』ではヒロインを演じるなど女優としても活躍中。

PHOTO Isamu Ebisawa,  TEXT Satoko Nemoto

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(C)2019 HBO Pacific Partners, v.o.f. HBO and HBO Asia Originals are service marks of Home Box Office, Inc. FOOD LORE is a service mark of HBO Pacific Partners, v.o.f. Used with permission. (C) 2019 HBO Asia. All rights reserved.

『フードロア: Life in a Box』

HBOアジア・オリジナルズ『フードロア』
2月15日(土)12:00~・16日(日)12:00~
BS10 スターチャンネルにて独占日本初放送(全8話)各日4話ずつ一挙放送

『フードロア:Life in a Box』
配信/スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS- 2月16日(日)配信スタート

監督 齊藤工
出演 安田顕、安藤裕子、川床明日香、ザ・グレート・カブキ、松原智恵子、板谷由夏 他

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