エルヴィス・プレスリーの孫として、世間から注目されて育った「ライリー・キーオ」。穏やかな暮らしを願いながらも叶わなかった幼少期から、全てを受け入れて築いた現在の地位。自分自身の考え方や行動を変えてみることで、新たな世界の道を歩いた彼女から学びたい。
デトロイトからフロリダへ ストリッパーの物語『Zola ゾラ』
物語の舞台は、アメリカ・デトロイト。
ゾラ(テイラー・ペイジ)はウェイトレスとして働きながら、夜はストリッパーとして稼いでいました。そんなある日、ゾラが働いているレストランにステファニ(ライリー・キーオ)という女性が現れます。
お互いストリッパーだったことから2人は意気投合して連絡先を交換。すると翌日、ステファニはゾラに電話して一緒にフロリダに行ってクラブで踊らないか? と打診します。出会ったばかりのステファニからの誘いに躊躇するゾラでしたが、フロリダに行けば絶対に大金を稼げるという話に心が動かされて遠征を決意。そしてフロリダへの旅にはステファニの恋人のデレクとルームメイト “X” も同行することになったのです。
気軽な気持ちでステファニの誘いにのったゾラですが、稼げると聞かされていたクラブでの仕事はそれほど金にはならず、実は同行したXはステファニのポン引きで、2人に売春させようとしていたのです。ゾラは全ての計画を知りすぐに帰宅しようとしましたが、ステファニの売春における報酬の低さを知り憤慨。そして自らが彼女をプロデュースして数倍の金額を稼ぐようになるのですが…。
実話を映画化 ツイートから生まれたリアルストーリー
この物語は、アザイア・キング(ゾラ)という女性が自身のツイッターに投稿した148のツイートが話題となり制作された、実話を元にした作品。
ハリウッドのセレブ達にも注目され、雑誌「ローリング・ストーン」にて、関係者への取材記事が掲載された上で映画化が決定しました。
本作では車中のシーンがスマホ映像に切り替わり、いわゆる “第四の壁” を超えて登場人物が観客に語りかけてきます。
物語の後半でステファニとゾラの別視点で進行するストーリーに視聴者として愉悦しました。SNSから全世界に広がった2人の女性の物語「Zola ゾラ」を是非劇場で体験してみてください。
「エルヴィスの孫」としてマスコミに追われ…“エンタメの世界”を受け入れるまで
そして、ステファニ役で本作に出演しているライリー・キーオは、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。両親はミュージシャンのダニー・キーオとリサ・マリー・プレスリー、そして祖父は世界的大スターのエルヴィス・プレスリーです。
元々はファッションモデルとしてキャリアをスタートしたライリーですが、21歳の時に青春映画「ランナウェイズ」で俳優デビュー。その後「グッド・ドクター 禁断のカルテ」「マジック・マイク」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「ローガン・ラッキー」などに出演。そして俳優だけでなく、監督作品「War Pony」は批評家から絶賛され、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール賞を受賞しました。
エルヴィス・プレスリーの孫として世間に注目されて育ったライリーですが、幼少期に両親が離婚。その後ひっそりと生活したいという願いは叶わず、母親のリサ・マリー・プレスリーは “キング・オブ・ポップ” のマイケル・ジャクソンと結婚。結局本人の願いは叶えられずマスコミに追われる日々を過ごし、リサとマイケルが離婚したのちに平穏が訪れるかと思いきや、リサがニコラス・ケイジと結婚してマスコミを賑わせます。そして2020年、俳優そしてミュージシャンとしても活動していた弟のベンジャミン・キーオが自宅で自殺してしまうのです。
静かに暮らしたいと願っていたライリーですが、エルヴィス・プレスリーの孫という立場からマスコミに追われる日々を過ごしました。家族に反発する時期もあったそうですが、次第に彼女は全てを受け入れてエンタメの世界に飛び込んだのです。待遇などに納得がいかない場合、職場や学校を変えるのも大事ですが、先ずは自分が変わることで日常に変化が訪れます。ライリーのように周りの変化を求めるその前に、先ずは自分が変わることが成功への近道なのかもしれません。
『Zola ゾラ』
監督 ジャニクサ・ブラヴォー
出演 テイラー・ペイジ、ライリー・キーオ、ニコラス・ブラウン、アリエル・スタッチェル、コールマン・ドミンゴ 他
公開 8⽉26⽇(金)新宿ピカデリー、渋谷ホワイトシネクイント 他
この記事を書いたひと
コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。