10月の衆院選で芸能人らが投票を呼び掛ける動画が話題になったことも記憶に新しい今、選挙事務所が舞台の映画が公開となると、それだけでも興味を惹かれる人は多いだろう。
しかも、出馬するのは世間知らずの奔放な二世候補、事なかれ主義だったはずの私設秘書と二人三脚で“落選”を目指すという物語。
主人公・有美(宮沢りえ)の議員秘書・谷村を演じた窪田正孝さんにお話を伺った。
“縁の下の力持ち” 議員秘書はマネージャーを参考に演じた
―坂下監督とは念願の初タッグですね。
「いつかご一緒したいと思っていたので、お話をいただいたときはすごく嬉しかったです。しかも、二世議員役が宮沢りえさん。皮肉と毒がいっぱいの脚本ですし、議員ではなく秘書にスポットを当てているところも面白いと思いました。後援会のクレームを受けるのも秘書の役目ですし、“縁の下の力持ち” の苦労がよくわかる内容にも惹かれました」
―基本的に表に出ない存在の政治家秘書を演じるにあたってのアプローチは?
「参考にしたのはマネージャーです。現場での気配りや行動は、議員秘書のイメージとかぶるとこがあると思います」
―威圧感たっぷりの県議会メンバーや後援会メンバー、そして無鉄砲な二世議員の川島ゆみをうまく扱うという大切な役割も担っているし大変ですよね。
「そのエネルギーは凄まじくて、よーいスタート!がかかった瞬間にトップギアになるんです。そうなると、“怒られる側” の我々秘書は笑いを堪えるのが大変でした(笑)りえさんは、エネルギー値が高いだけではなくて、大先輩にこんなことをいうのは失礼かもしれないのですが、すごくかわいらしい方なんですよ。しかもそれでいて、“いろんな経験をされてきたんだな” と感じさせられる雰囲気もある。有美役がりえさんでなかったら、あの谷村は作れなかったと思います。有美さんが起こす竜巻に飲み込まれることで、谷村が人前に出る側の目線も味わえたという実感があります」
結婚が転機 役者はあくまでも“やりたいことのひとつ”
―谷村が有美との出逢いによって変わっていったように、窪田さんご自身もこれまでの人生において、生き方や考え方が大きく変わったことはありますか?
「ここ数年は特に変化が大きいです。一番のきっかけは結婚ですかね。これまでは “自分には役者しかない” と追い詰めることによって、そこから出てくる何かを求めていたところがあったのですが、それも20代までだと思います。役者はあくまでも “やりたいことのひとつ” だという意識が強くなって、チャレンジしたいことや極めたいことがどんどん増えてきています。たとえば、趣味で野菜を育てているんですけど、枝豆やトマト、きゅうりなどを育てるのは楽しいですし、“より大きく育てるにはどうすればいいか” とか、ネットの張り方とか、初めて知ったこともいっぱいある。何事もやってみないとわからないし、やってみて損はないんだから、興味があることはどんどんやっていきたいですね。ボクシングも続けたいし、サウナ小屋を作ることも、やってみたいことのひとつです」
―やりたいことがあっても、なかなか一歩を踏み出せない人も多いです。
「今回の作品に携わったのを機に改めて考えましたけど、政治家にもそれを支える側にもそれぞれの苦労があるけれど、その苦労を乗り越えてもやりたいかどうかってことだと思います。どう生きるかを決めるのは自分自身。そのままでいたいのか変わりたいのかを考えて、変わりたいと思えば変わればいい。自分の気持ちに素直になれば、未来は変わっていくと思います」
Masataka Kubota
1988年生まれ。2006年に俳優デビュー。2012年第34回ヨコハマ映画祭では、映画「ふがいない僕は空を見た」で最優秀新人賞を受賞。2019年に、ドラマ「ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜」(フジテレビ系)で月9ドラマ初主演を果たし、現在セカンドシーズンも放送中。2022年には、映画「決戦は日曜日」の他、「ある男」、「劇場版ラジエーションハウス」の公開も控えている。
『決戦は日曜日』
監督・脚本 坂下雄一郎
出演 窪田正孝、宮沢りえ、赤楚衛二、内田慈、小市慢太郎、音尾琢真 他
公開 2022年1月7日(金)全国公開
PHOTO Hirohiko Eguchi (Linx.)
TEXT Reiko Matsumoto
STYLING Yonosuke Kikuchi
HAIR&MAKE Miki Kasuya