ドラマ、映画、CMなど、多方面から今もっとも求められている女優・松本まりかさんが、「WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て」で連続ドラマ初主演を果たす。
「痺れる現場だった」という松本さんに、作品への意気込みや見どころを聞いた。
実力派の松本まりか 内田監督から何度もオファーを受けていた
ドラマ、舞台、小説の3つのコンテンツで展開されるオリジナルシナリオの連動プロジェクト「向こうの果て」。舞台は昭和60年の東京。
痴情のもつれからマンションの一室で放火殺人が発生。逮捕された池松律子(松本まりか)と、死亡した小説家・君塚公平(松下洸平)は幼馴染だった。
やがて律子を取り巻く男たちの姿が浮かび上がり、彼女の数奇な人生と事件の真相が明らかになっていく…。
ドラマ版の律子を演じるのが、今や数々の作品に引っ張りだこの実力派女優松本まりかさん。
監督を務めるのは映画『ミッドナイトスワン』で「第44回日本アカデミー賞」9部門を受賞した俊英・内田英治監督。
以前から松本さんに何度もオファーをしていたがスケジュールの都合が合わず、ようやくタッグが実現したという。そして、律子を取り巻く男たちには松下洸平さん、柿澤勇人さん、加治将樹さんら演技派が集結した。
スタッフと役者の集中力が最高潮に達したとき奇跡のような瞬間が生まれる。そんな現場にいられることが嬉しかった。
「今回のドラマの多くのスタッフさんは『ミッドナイトスワン』を手がけた内田組の皆さんでした。
ひとつの作品を作ることに対して一人ひとりがいつも本気で、それが本番になるとさらに全員の本気がガシッと結びつく瞬間があって…、初日からすごく居心地が良かったのを覚えています。
個人的な会話やコミュニケーションはなくても本番で通じ合える、つながり合える、呼吸が合うという感じでした。
共演者の方々もそうです。それぞれの集中力が結集して自分以外の人とひとつになる瞬間、まさに痺れる瞬間が何度かあって。稀有で幸せな現場だなと。
律子と特別な愛情で結びついている公平役の松下さんは、常にまっすぐ本当に愛情深い真剣な眼差しを向けて律子を守ってくれました。
柿澤さんとのシーンもラストに向かうにつれて関係性が変化していく様など視聴者の皆さんにも、そのゾクっとくる瞬間を味わってもらえたらいいなと思います」
WOWOWオリジナルドラマだからこそ描ける骨太なストーリーとともに、細部までこだわって撮影された映像美にも注目したい。
「例えば、喫煙シーンや暴力的描写なども、物語の表現方法の一つとしてある程度許容されていることが、WOWOWのドラマの魅力だと思います。監督、スタッフ、脚本家、役者それぞれがアーティストでいられる現場というか。
スタッフが内田組ということもあって、撮影はとても映画的でした。私は映画出演の経験が少なく、これほど大きな役をいただけたこともなかったので、そんな現場にいられることがたまらなく嬉しかったです」
意外にも連続ドラマ初出演
意外にも本作が連続ドラマ初主演。主役を演じることへのプレッシャーや、現場での環境作りなど、意識したことはあったのだろうか。
「今このタイミングで素晴らしい監督、スタッフ、脚本、共演者に恵まれて本当に運が良かったと思います。
デビューしてから20年、心に秘めた主演への夢はあったけれど、この作品で主演と言われた時は、嬉しさよりも作品への興味や役への責任の重さの方が大きかった。
主演として何か特別なことをしたわけではなく、私はただただ律子を演じただけ。私がやるべきこと、やれることはそれしかないと思いました。」
掴みどころのない「律子」を演じて
律子を取り巻く男たちが語る彼女の印象はすべてがバラバラで、掴みどころがない。担当検事の取り調べも、のらりくらりとかわしてしまう。そんな律子は松本さんにとってどんな女性に映っていたのだろう。
「律子は掴みどころがなく、知ろうとすればするほど底なし沼に落ちるような感覚でした。でも今振り返ると、彼女がどうしようもなくて、もがいている片鱗は自分の中にすごく感じることができますし、律子は私の中にもいたんです。
私が持っているもの以上のことは表現できないけれど、彼女を取り巻く男性たちと実際に出会って、その人たちから引き出してもらった部分が多かったと思います。まさに身ひとつ、裸の状態で演じたような作品なので、たくさんの人に観てもらいたいです」
外出自粛の今だからこそ「言葉」つながり合いたい
外出自粛期間中は仕事への影響を考え、できるだけ人との関わりを持たずに過ごしていたという松本さん。今一番嬉しいのは「言葉のギフト」だという。
「お手紙でもメールでも、言葉をもらえるのが一番嬉しいです。私は大好きな人や尊敬する人からのメールに返信できなくなっちゃうタイプなんです。何て返したらいいのかすっごく考えてしまって。
本当の気持ちとは裏腹なことを返してしまったり…。そこはすごく変わりたいところです。コミュニケーションが少なくなっている今だからこそ、言葉で人とちゃんとつながり合いたいですよね。
あとは誰にも見えないところでカッコつけられる、美しい行いができる人でいたい。そういう生き方に憧れます」
Text Yukari Tanaka
Photo Hirohiko Eguchi (Linx.)
Styling Hitoko Goto
Hair&Make AYA (LA DONNA)
衣装
トップス 25,300円・パンツ 26,400円 共にスタイリング/(スタイリング/ルミネ新宿1店)・ピアス 77,000円 ジジ(ホワイトオフィス)・リング 162,800円 マリハ(マリハインターナショナル)
松本まりか
1984年生まれ。2000年にテレビドラマ「六番目の小夜子」で女優デビュー。2018年放送のドラマ「ホリデイラブ」(テレビ朝日)での演技が注目され大ブレイク。2019年、自身初の映画賞となる「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019・ニューウェーブアワード女優部門」を受賞。2020年12月には写真集「MM」を発売した。現在「オトナの土ドラ」シリーズ第33弾「最高のオバハン 中島ハルコ」(フジテレビ系)に出演中。
「WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て」
監督 内田英治
脚本 竹田新
出演 松本まりか、松下洸平、柿澤勇人 他
5月14日(金)より、WOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて
毎週金曜夜11時~ 放送・配信(全8話) 【第1話無料放送】