「マルホランド・ドライブ」の主役に大抜擢され、世界中から注目を浴びたナオミ・ワッツ。不遇の時代でも諦めずに演技を続け、出会いをきっかけに人生を変えた彼女から学びたい。
闇を抱えた少年の本性を見抜けるか
主人公である高校生のルース・エドガー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)は、戦火の国エリトリアで生まれ育ちましたが、アメリカ人のエドガー夫妻(ナオミ・ワッツ/ティム・ロス)の養子として米バージニア州に移り住みました。
ルースは様々なハンデキャップを克服し、スポーツも勉強も優秀でユーモアのセンスもあり学校の人気者となっていましたが、担任教師のハリエット(オクタヴィア・スペンサー)から出された課題のレポートをきっかけに状況が変化していきます。
ルースのレポート内容に過激な思想が漂うことを気にしたハリエットは本人に問い詰めますが、ルースはそれを否定。
納得できないハリエットはルースの周りを調べると、彼が同級生への性的暴行事件に関わっていたのではないかという疑念が生じます。
果たしてルースは優等生なのか? それとも過激な思想を持った怪物なのか…?
全米の賞レースでは20個以上のノミネートを果たし、最も優れた独立系作品を選ぶインディペンデント・スピリット賞では監督賞、主演男優賞、助演女優賞の主要3部門に名を連ねた本作は、一人の青年の光と闇を映し出します。
ルースは義理の両親が求める子供になろうと勉学やスポーツに勤しみますが、その状況を全て受け入れているわけではありません。
「本当はみんな心から僕を信じていない…」周りから完璧な優等生だと思われ、校長からは学校の誇りだと評価されているルースでしたが、少なからず心に闇を抱えています。
親や周りの期待に応えようとするあまり、自分自身を抑え込んでしまうのは多くの方が経験したことがあると思います。
ルースは誰もが羨む優等生なのか?それとも危険思想のモンスターなのか?「ルース・エドガー」を是非劇場で体験してみてください。
生計のため日本でモデルも 監督と出会い人生一変
そして、今回ピックアップする女優は、ルースを見守る義理の母親エイミーを演じたナオミ・ワッツです。
音楽家の父親と衣装デザイナーの母親の元、イングランドで産まれた彼女は幼少期に父親を亡くし、その後家族でオーストラリアに移住します。
ナオミは子供の頃から女優を目指して演劇学校に通いますが、役者として結果が出せず、モデルとして生計を立てるために日本へ移住します。
しかし、女性モデルとしては身長があまり高くなかったこともあり上手くいかず、帰国してファッション雑誌のアシスタントとして働くのです。
ナオミは何度も挫折を繰り返したことで、女優として成功することへの情熱は冷めていましたが、知り合いの小劇団などから役者としてオファーされ、再び芝居をするうちに諦めかけていたショウビズの世界を目指すようになります。
その後、周りの役者仲間達が華々しいキャリアを積んでいく中、彼女はあまり評価されずTVドラマの脇役やコマーシャル、そしてカルト映画などに出演していました。
そんな彼女の人生を一変させたのが、デヴィッド・リンチ監督との出会いです。
オーディションでナオミのことが気に入ったデヴィッド・リンチは自身の監督作「マルホランド・ドライブ」で主役に大抜擢。
その好演が評価され、世界的に注目されるようになり「21グラム」でアカデミー主演女優賞にノミネートされるのです。
ナオミ・ワッツは子供の頃から女優になることを夢見て活動していましたが、挫折して一時は普通に働いていました。
しかしデヴィッド・リンチに出会ったことで人生が大きく変わったのです。
人間誰しもが夢を見続けることはできませんが、諦めなければ誰かが貴方を認めてくれてプロモーション(抜擢)してくれるかもしれません。
人生の成功の大きな鍵は人との出会いなのです。
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「ルース・エドガー」
監督 ジュリアス・オナー
出演 ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー、ケルヴィン・ハリソン・Jr. AND ティム・ロス 他
公開 5月15日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷 他
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コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パソナリティ」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。
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