『ブラックバード』主演スーザン・サランドン 母の安楽死で問われる死生観

映画「デッドマン・ウォーキング」でアカデミー主演女優賞を受賞した、スーザン・サランドン。彼女のポリティカル・ボイス(政治的発言)は有名で、反戦運動や人権問題などにも積極的に関与。自分の信じるメッセージを発信し、自ら行動を起こす彼女の姿勢に学びたい。

徐々に体が動かなくなる時アナタならどうする?

ALSという難病を患ったリリー(スーザン・サランドン)は、自分の意思で喋ったり身体が動かせる内に安楽死することを夫のポール(サム・ニール)と話し合い決意します。

「その日」の前夜、リリーは娘達や長年の親友などを自宅に招いて夕食を共にしながらプレゼントを渡したり思い出を語り合うなど、とても穏やかな時間を過ごしていました。

しかし全員が納得した形でのリリーの安楽死のはずが、娘のアンナ(ミア・ワシコウスカ)が「ママは生き続けるべきよ」と主張しはじめたのです…。

「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」と、村上春樹はノルウェイの森で綴っていますが、安楽死がテーマの本作は、人が避けては通れない死について真正面から描いています。

静かに観客に問う死生観

人間の死ぬ権利については当然賛否が分かれるとは思いますが、少なくとも思考停止してはいけないテーマだと考えさせられました。

ちなみにこの作品のあらすじを読まれた読者の方は、本作に対してかなりヘビーな印象を受けると思いますし、観客に対して死生観を問う物語に重圧を感じる方もいるかもしれません。

しかし「ブラックバード」の作風は限りなくドライで、ときおり機知に富んだセリフも登場します。

例えば死を決行する前夜に、孫から将来俳優になりたいと打ち明けられたリリーが「その話は死ぬまで秘密にするわね」と言ったり、右手が不自由になりつつあった彼女がワイングラスを床に落としてしまったあと「紙コップが必要ね」と笑顔で家族に話したりします。

リリーは死という誰しもが逃れられない現象が間近に迫るなか、その死への過程をジョークに変換しているのです。

この作品が投げかけるテーマに対して僕は現段階で答えは出せませんが、「生きること」と「死ぬこと」に目を背けてはいけないと深く熟考しました。決して派手ではないですが、心に染み入る本作を是非劇場で体験してみてください。

一躍セレブとなったスーザンの転機は

本作で主演を務めるスーザン・サランドンは、アメリカ・ニューヨークで9人兄弟の長女として育ちました。

そんな彼女は、大学の頃から本格的に演劇を学び始め、映画「ジョー」でメイン・キャストの一人として華々しくデビュー。しかし女優としての評価は芳しくなく、それから下積み生活が続きました。

そんな中、彼女は転機となる作品の主役に抜擢されます。それはリチャード・オブライエン原作の舞台劇を映画化した「ロッキー・ホラー・ショー」です。この映画は、ホラー作品でありながら、批評家やファンからはミュージカルコメディとして評判が高く、現代でもカルト作品として人気を博していて様々な映画でオマージュが捧げられています。

そしてスーザンは、映画「アトランティック・シティ」で初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、ハリウッドでも認められる女優の一人となり、映画「デッドマン・ウォーキング」でアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。

立場を恐れず信じるメッセージを発信

ハリウッドでは政治に対して発言することも俳優の個性として認められる風潮がありますが、その中でもスーザン・サランドンのポリティカル・ボイス(政治的発言)は有名。

反戦運動や人権問題に関わり、大統領選でも積極的に自分の推す候補を応援してバックアップしています。間違いなくスーザン・サランドンはハリウッドにおいてのAクラスセレブですが、そんな自分の立場は関係なく己が信じるメッセージを発信。

忖度せずに自分の主張を世間にアナウンスして行動を起こす彼女の姿勢には、僕も含めて見習うべき所があるかもしれません。

ブラックバード 家族が家族であるうちに』

(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED

監督 ロジャー・ミッチェル
脚本 クリスチャン・トープ
出演 スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレット、ミア・ワシコウスカ、サム・ニール、リンジー・ダンカン 他
公開 6月11日(金)TOHOシネマズシャンテ 他

この記事を書いたひと

コトブキツカサ(映画パーソナリティー)

1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。

この記事を書いたのは
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