裕福な家庭に生まれた上品な女優というイメージから、「ドラゴン・タトゥーの女」で
超過激なリスベットを演じて女優としての成功を手にしたルーニー・マーラ。
人生を大きく飛躍させるには、時に客観的なイメージを大きく脱却することが必要なのかも。
巨匠テレンス・マリックと豪華俳優陣が集結
舞台は音楽の街であるアメリカ・テキサス州のオースティン。自分が置かれている現状に満足していないフリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)は、音楽業界の大物プロデューサーであるクック(マイケル・ファスベンダー)と出会い親密な関係となり、まだ駆け出しのソングライターであるBV(ライアン・ゴズリング)はフェイに想いを寄せます。
一方、音楽業界で成功しているクックはダイニングで働くウェイトレスのロンダ(ナタリー ・ポートマン)と知り合い彼女を誘惑します。物語は4人の運命が交差しながら思いもよらぬ展開へと発展していくのです。
映画監督の最も大事な要素の一つは何か? と問われたら、僕は個人的にオリジナリティ(独創性)だと答えるのですが、本作の監督であるテレンス・マリックは間違いなくオリジナリティを突き詰めたクリエーターです。
彼の作品は時にネイチャー・ムービーの様であり、時にハイブランドのロング・コマーシャルだと感じる人がいるかもしれませんが、映画が始まり僅か10秒でテレンス作品だと認識できる彼の作風は唯一無二と言っても過言ではありません。
大物ハリウッド俳優でさえ作品の素材に過ぎない
以前、北野武監督にインタビューした時、カメラに収めた役者の演技はあくまでも素材であり、料理人である監督がその素材を編集という形で調理するんだと話していました。
テレンス作品に出演を希望するAクラスのハリウッド俳優は大勢いますが、まさに彼の作品では大物出演者達でさえ素材に過ぎないのです。
具体的に限定された目標というより、何者かになりたいと望むフリーターのフェイと、ソングライターのBVと、ウェイトレスのロンダは業界の大物であるクックと出会うことで劇的に運命が変わります。
しかしそれは全てがハッピーなわけではありません。クックは誰もが経験出来ない華やかなイベントへのVIPパスを手渡してくれますが、それは禍々しい大きな唸りに身を任すことと同義なのです。
テレンス・マリック監督の元に集ったマイケル・ファスベンダー、ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、ナタリー ・ポートマンという全員がリーディング・アクターという贅沢なキャストの競演は見応えあり。
そしてアカデミー撮影賞で3年連続オスカーを受賞したエマニュエル・ルベツキの「魔法」を是非劇場で体験してみてください。
人生のアップデートには周りのイメージから脱却することも必要
ハリウッドでは裕福な家庭で生まれ育った俳優が沢山いますが、本作に出演しているルーニー・マーラは、父親がアメリカンフットボールのニューヨーク・ジャイアンツ副社長という、ハリウッドでもスーパーリッチな家庭で生まれ育ちました。
姉である女優のケイト主演の映画「ルール 封印された都市伝説」でデビュー。そしてテレビドラマ出演を経て、「ソーシャル・ネットワーク」でのジェシー・アイゼンバーグの恋人役で注目を集めます。
そして「ドラゴン・タトゥーの女」のオーディションを受け見事主役の座を射止め(一説にはスカーレット・ヨハンソン、ナタリー ・ポートマン、ジェニファー・ローレンスもオーディションを受けていた)アカデミー主演女優賞にノミネートされました。
プライベートでは映画「Her」で共演したホアキン・フェニックスと結婚し、先日男児が誕生しました。(子供の名前はホアキンの兄である故・リバー・フェニックスからリバーと名付けられました)
世間的には裕福な家庭に生まれた上品な女優というイメージだったルーニー・マーラが、ドラゴン・タトゥーの女では超過激なリスベットを演じて成功を手にしたことを踏まえ、時に周りのイメージからの大いなる脱却が人生のアップデートには必要なのかもしれません。
「ソング・トゥ・ソング」

(C)2017 Buckeye Pictures, LLC
監督・脚本 テレンス・マリック
出演 ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマン 他
公開 12月25日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷 他
コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パソナリティ」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。